はじまりの結婚式

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 式は終わった。  僕の死期はもうちょっとだけ先らしい。  直角に曲がった短いヴァージンロードもデコラティブな壁もなくなり、僕はいつものパジャマ姿に戻ってベッドに仰向けになっている。僕にとっては有り難迷惑ながらも、お人好しのスタッフ達があれだけ騒がしく時間も割いて式の準備をしてくれていたのに、式そのものはあっけなく終わった。儚いものだよ、人の努力で築いたものとは。ばかばかしかったね、結婚式も僕の人生も。今となっては、こんな儚くてばかばかしい人生を歩んだ僕自身に腹が立つ。僕は、僕という人間が信じられないよ。何だったんだ?僕という存在は。  さっきまで花嫁姿だった彼女が普段着になって僕のベッド脇のパイプ椅子に腰を掛け、何かの雑誌を読んでいる。彼女の左手の薬指には先程の式ではめた僕のとペアの結婚指輪が鈍く光っていた。
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