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2010年6月。
世界中の関心が、これから始まるサッカーW杯に集まっていた頃に、僕らは結婚式を挙げた。
式場は、僕が入院している病院の僕の個室だった。
★式の直前★
ベッドに横たわったままの僕に、真っ白のタキシードを着せてくれている女性看護師に向かって、僕は自分の心の内を正直に話した。
「死装束を身に纏わされているように感じるよ」
「こんなおめでたい日くらいブラックジョークは封印したら?」
とその看護師は手を休めずに、看護師特有の押し付けがましくない笑顔を見せながら応えた。
「今の、ブラックジョークに聞こえた?」
「ええ。あなた一流の」
と言った看護師の声は確信的なトーンだった。
「そう」
とだけ僕は返事をして少し黙った。
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