はじまりの結婚式

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 彼女の話は続いた。 「私はあなたを通して死と隣り合わせになって、そしてちゃんと死と向き合っている。そんな自分だからこそ、私は自分を信じられる。そして、幸せに感じられる。でも、あなたはあなた自身の死と隣り合わせになっている自覚はありそうだけど、ちゃんと死と向き合ってはいない。死が隣にあるのにそっぽを向いている。そんな自分じゃあ、信じられなくて当然だと思う。もちろん、あなたはあなた自身を幸せに感じられない」  何も言えない。何も言葉が出てこない。彼女の熱くも淡々と語る言葉の一つ一つが僕の頭で乱反射して何も思考できない。僕はただただ彼女の澄み切った真直ぐな瞳を見つめていた。
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