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僕は口を開いた。
「じゃあ、ホワイトジョークならいいのかい?」
「そうねぇ。白一色だからタキシードが死装束みたいだなんてブラックジョークを言ったんでしょ?それなら、白いタキシードに着替えている今はホワイトジョークも駄目ね。だいたい、あなたが真っ白のタキシードじゃなきゃ嫌だって言って聞かなかったんじゃないの。黒や茶色のタキシードは自分がゴキブリになったように感じてしまうし、シルバーグレーのタキシードは“真夜中の月明かりに照らされたずぶ濡れの鼠男”を連想してしまうからって」
「そりゃそうだ」
と僕は言って浅いため息をついた。そんな僕のささやかなため息を看護師は知ってか知らずか作業を一瞬止めて僕の目を見てニッと笑った。ほんの一瞬の“ニッ”だった。看護師は何事もなかったかのように一瞬の内に作業を再開し、そして話しだした。
「白いタキシードを着たあなたと白いウェディングドレスを着た花嫁。赤い糸で繋がっていたその二人が結ばれる日なんだから、今日は紅白ジョークってどう?紅白なんて“めでたい感”たっぷりじゃない?」
と言って看護師は屈託のない笑顔を僕に見せた。
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