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機嫌の良し悪しは、閨の所作に直結する。
元親はどの宝物よりも元就を慈しんでいるが
一方で誰よりも元就に自分を理解してほしいと願っている。
物として所有する相手に対して
理解を求めるなど笑止千万といえばそれまでだが
そんな不遜な態度を取ろうものなら
閨で残虐非道の限りを尽くす。
元就とて武将であり
戦場で痛みには慣れていたが
快楽と結びついた痛みには覚えがない。
だがそんなとき
どんなにやめてと懇願したところで
鬼が己の欲望を遂げるまで
決して元就の願いは聞き入れられない。
ならばいっそ。
媚びてしまった方が楽というもの。
元就にその自覚があるかどうかは定かではない。
それでも彼の態度が
元親の機嫌を取る方向へと向かうのは
無理からぬことだった。
「新しい着物が手に入った。
良く似合うと思うから、着替えでもするか」
鬼は軽々と元就を抱き上げると
薄布のかかった睦み合うための場所へと
連れて行った。
元就の手は自然と鬼の逞しい首に回る。
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