注意書&前置き

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そんな動作一つさえ仕込むのに時間がかかった。 元親は己の得た結果にまず満足している。 気位がはるか日輪の高さほどにもある この美しい想い人を、手に入れたいと思い始めて 早十年が過ぎた。 痺れを切らして強行軍に出て初めこそ 捨て猫のような頑なさではあったが 元から淫らな性質はあったのだろう、 まるで生娘が花開くように 元就の体はもはや己なしでは生きられなくなっている。 その実感だけが元親の原動力といっても過言ではない。 京から取り寄せた着物は 薄紫の地に銀糸で藤の花が刺繍された 上等な絹物である。 元就の体から今着ているものを容赦なく剥ぎ取ると 元親は何回目になるかわからないため息をついた。 どんなに荒々しく抱こうとも 後々まで痕になるような傷はつけない。 それを心情として慈しんできた甲斐もあって 元就の体は真っ白で そのせいもあり 自己主張の激しい部分の血流が露わになっている その様がどうしようもなく妖艶なのだ。
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