第二幕 月夜と影

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「末(スエ)姫…」 ぽつりと誰かの名を呼ぶ声がして、人影が消えた。 「きゃっ…」 目の前に人影が現われて驚きの短い悲鳴をあげてしまった。 夜中ということを思い出し、慌てて口元を押さえた。 視線をあげれば、じっと見つめる双眸がある。 ゆっくりと大きな手が伸びてきて、口元を押さえていた手を優しく掴み離した。 (そうね…今更押さえても遅いわ…) 頬が赤くなるのを感じ、私は少し顔を伏せた。 「えっ…」 不意に手の甲に温かい物が触れて、顔をあげた。 「!」 私の手の甲に触れていたのは、その方の唇。 「な…な…」 言葉にならない声をあげる。 私の様子にその方がふっと笑った気がした。 「あ…」 手を離され、背中を向けられる。 手を離されたことが寂しい。 .
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