第二幕 月夜と影

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「待って…!」 掴んだ腕が生暖かく湿っている。 微かな血の臭いに気付く。 「怪我を…?手当て…」 「俺じゃない」 『みゃー…』 「?」 聞こえた弱々しい鳴き声に首を傾げれば、その方は短いため息をひとつつき、懐から何かを取り出した。 「子猫…」 鳥か獣に襲われたのだろう、小さな体に痛々しい傷が出来ている。 庭で佇んでいたのはこの子を見つけたからなのだろう。 「大丈夫だ。死なせない」 私を安心させるようにその方はぽつりと言った。 子猫を抱いている手とは、反対の手が伸びてくる。 しかし、私の頭を撫でようとしたであろう手は止まり、触れずに離れていった。 「髪が汚れてしまうな」 その方は離した手を見つめ、ふっと自嘲の笑みを漏らす。 「俺なんかが触れたら…」 何故だか、その言葉が胸を苦しくさせた。 .
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