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私はその方の手を握った。
「!」
その方は驚いた表情を見せる。
「そんなことありません!」
ぎゅっと握った。
離してしまわないように。
離されてしまわないように。
「末姫…」
どうやら末姫とは私のことらしい。
何故かそのことにほっとした。
「貴方の手は…」
「さき様?まだ起きていらっしゃるんですか?」
私の声を遮る侍女の声。
そして、近付いてくる気配がする。
「あっ…」
外される手。
「待って!」
掴もうとした手は空を掴んだ。
その方の姿は目の前から消えていた。
私は辺りを見回す。
「!」
人影を見つけた場所にその方が立っていた。
その方の双眸が月の淡い光りを宿す。
囚われる。
一瞬で。
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