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「さき様」
次は窘めるように呼ばれ、視線を侍女へと戻す。
この侍女は幼い頃からずっと仕えてくれていて、遠慮なく説教もする。
「眠っていたら、物音がしたのよ。だから」
「さき様。燭台が灯ってますし、書物が開いたままですが?」
(ああ、私の馬鹿…)
書物だけは片付けて置けばよかったと後悔。
すると、はぁとため息が聞こえた。
説教かと思い、身構える私に侍女は口を開く。
「もういいですから。おとなしく寝て下さい」
と、私を臥所へと促した。
促されるまま臥所に横になった私は、夜着を整えてくれている侍女に尋ねる。
「説教はしないの?」
「しますよ。明日の朝に」
自分の顔が引きつるのが分かった。
「おやすみなさいませ」
そんな私に侍女は恭しく頭を下げ、燭台の火を消した。
部屋を出、障子を閉める音がし、足音が遠ざかっていく。
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