第一幕 匂い袋の香りと毒

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「さゆ姫」 不意に呼ばれた声にはっとして顔を上げた。 「!」 私が顔を上げるのを待っていたかのように、するりと骨張った手が頬に触れた。 温かい手のひら。 その手のひらから熱が生まれる。 触れられた頬から熱が全身に広がっていくのと同時に、手がゆっくりと首筋を撫でるように下りていく。 突然のことに固まってしまう。 漆黒の双眸が私を捕らえている。 その双眸に引き込まれそうになり、目をぎゅっと閉じた。 .
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