第一幕 匂い袋の香りと毒

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離れていく温もり。 閉じていた目を開ければ、青年が立ち上がったところだった。 そのまま背を向け出て行こうとする青年に、私は慌てて声をかける。 「あっ!匂い袋」 「替えておいてくれ」 青年が足を止めた。 「代わりにそなたのを借りてく」 顔だけ振り返り答えた青年の手には桃色の匂い袋が握られていた。 それは、自分の首から下げて懐にいれてあった匂い袋だった。 先程触れたのは匂い袋を取るためだったのだろう。 かぁっと頬が熱くなのを感じて、顔をふせた。 ふせたのはいいが、青年の反応が気になって視線だけ上げた。 「!」 青年の優しい双眸とかち合う。 ふっと笑った青年は匂い袋を首にかけ、 「またな、"咲雪"」 と言葉を残し去って行った。 .
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