第一幕 匂い袋の香りと毒

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"さゆ姫"ではなく、"咲雪"と呼ばれ、引いた顔の熱が戻ってくる。 「やられた…」 負けた気分だ。 行儀が悪いのは分かっているが、ぽてっと畳に寝転がった。 優しい風が入り込み、髪が揺れる。 焚いている香の香りが鼻腔をくすぐる。 この香りは"毒"。 これ以上"好き"になるわけにはいかないのに、"好き"になっていく。 "離れ"なければいけないのに、"側に"いたくなる。 "引き離される""運命"もこの香りの"毒"に犯されて、"変われば"いいのに。 手に持っていた匂い袋をぎゅっと両手で包み込む。 .
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