半幻の世渡鬼

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ひらり、ひらり、華ぞ散る。 その花園の木々はどれも満開を迎え、風に吹かれては花弁を儚げに舞い踊らせる。 その光景は最早この世のものとは思えない美しさ。 この時期ならば人々は花見を目当てに挙って足を運ぶだろう。 だが其処は通常の人間が来れるような場所では無い。案の定人の影は一つも無いが、代わりに賑わいを見せる者達がいる。 半透明の浮遊物達、其即ち霊魂。 そう、“この世のものとは思えない”というのは比喩では無く、誠の話。 其処は死後の魂が留まる世“冥界”に存在する“白玉楼”という平安の寝殿造を思わせるような巨大な屋敷。 次なる転生を待つ魂達の休息の場所である。 無論、其のようなに誰も居ない訳がなく、その魂達の管理者である当主とその従者が住まう。 ある昼下がり、花園には似つかわしくない鋭い金属音が屋敷の裏手から谺した。 影は三つ。 小さな少女と大男という相対的な姿が互いに刃を交えている。その眼光たるや限り無く鋭く、既に大分長く続いてるも腕を鈍らせる様子は全く無い。 少女の方がその小柄を生かして大男の懐をその二対の刀で突いて来る。が、大男は手にする小回りの利きそうにない大長巻を自在に操り紙一重で受け流し、そのままの勢いで反撃に転じる。 少女もまたそれを予測したように素早い一撃で先に仕留めようと刃を放った。
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