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この白玉楼、大半が転生の為残留する霊と此処の使用人、いや、霊が屋根の下に集うが、実質住人として数えられるのは人型を持つも亡霊の幽々子、半人半霊の妖夢、半妖半霊の仁己の三人のみである。
但し、仁己だけは客人という形で白玉楼に身を置いている。
彼の故郷は現世の日本。幻想郷を訪れたのはついこの前。俗に言う“幻想入り”を果たした者である。
その経緯はまた別の機会に話すとしよう。
それと住人として数えるのか定かではないものの、もう一人。
「今日の習練は此処までで宜しいですね?」
「ああ、お疲れ妖夢。それと桜月も。」
自らの得物の名を呼ぶ。
するとそれは桜色の光を発し弾け、散らばった分子が再び集束した。
発光が収まるとそこには先程の大きな得物とは似ても似つかない小さな人形程度の幼娘が存在した。
「ご主人もお疲れ様ですっ!」
幾百年と使われ続けて付喪神となった姿は名に因んだ桜と三日月を催した着物を羽織り、無邪気に笑っていた。
「よし、それじゃあおやつにしましょ。」
不意に、待ってましたと言わんばかりの満面の笑みで幽々子が言った。
日も西へ傾き暮れ始めるのも近い刻。食を愛する彼女が今求める物と言えば、三時のおやつに他ならない。
「妖夢、お団子ー。」
「はいはい、少々お待ちくださいね。」
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