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「仁己の腕も漸く妖夢に追い付いてきたわね。」
五本目を平らげながら幽々子が言う。今日の話題は仁己の戦法についてのようだ。
「以前は大振りすぎて反応すら儘ならなかったのにね。」
「はい。しかしまだ一本取れた事では御座いません。ここで自惚れてはまたやられてしまう事でしょう。」
「全く妖夢といい貴方といい生真面目よねぇ。」
二人と対称的な性格の幽々子は暢気に次の団子に手を出すが、皿にはその串しか残っていない。顔をしかめて次の皿を催促しようとした時、妖夢がタイミングよく御代わりを持って茶の間にやって来た。
「仁己さんは永らくの間は刃を取っていませんでしたから、太刀筋が戻ってきたということでは無いでしょうか?」
手際よく幽々子の皿を取り換えて自身も席に付く。
「だと良いんだがな……こうも素早く小柄な少女が相手というのは……例が無いので慣れなくてな。」
・・・
戦とは男の物。向こうの出身である仁己も妖怪とはいえ認識はそうであった。
だが此処幻想郷でそれはどちらかと言えば女性の物だ。
色とりどりの弾を作り、形を成させ、放ち、魅せる美しき戦。
とはいえ『弾幕ごっこ』という、彼女達にとっては娯楽として楽しめる程度のものであり、非殺のルールも相成り安全性も(基本的には)確保されているが、仁己の眼には何ら戦と変わり無く映ったようだ。
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