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「敵にするのは同等かそれ以上の巨漢か得体の知れない化物……女の影なんぞ微塵も無かったさ。」
茶の湯気に戦に明け暮れた過去が映り浮かぶ。
血を血で洗う。弱肉強食。無秩序という理。妖怪の世とはそういうものだった。
自ら言ったものの忌まわしく思えてきて、溜め息で掻き消す程仁己は戦が嫌いだった。
だが今やその戦に華を見出だし、惚れ込んでしまった自分が居る。
世界は違えど滑稽さを感じずにはいられない。
「……こんな大男が弾幕を放つのは、可笑しいことでしょうか。」
「そうねぇ……主に女性がやるものだし、可笑しいと言えば可笑しいかもしれないわねぇ。でも格好とか気にせずに楽しめたなら私はそれで良いと思うわ。」
「はぁ……」
その間延びした幽々子の言葉には、よく解らないが安心を感じられる物がある。それに、元々自分は形振り構わず生きてきた身であったと再確認し、苦笑する仁己であった。
……そういえば醤油が切れそうだったな。冷奴でも出すようなら買いにいかねば。
「醤油を切らしていたので買いに行ってきます。妖夢、次いでに何か必要なものがあるか?」
「あ、でしたら岩魚を頼めますか?焼き魚を加えたいんです」
「承知した。桜月。」
「もぐ……むぁ、ごひゅじんまっふぇくだひぁい!あとひゅこし……」
自分の体型の三分の一はあるであろう団子にかぶり付く桜月を無理矢理つまみ上げ、人里へと赴いた。
今では主とその住まいの為に切磋琢磨しなければならない仁己。
だが忙しくも充実した日々は彼にとって安息と成りうるだろう。
「では、行って参ります。」
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