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笑いたくなるくすぐったさを堪えつつ、俺はわざと拗ねた様に言う。
「だって本当に佐藤のショコラ・ラテは苦いから。俺が甘党だって知ってるでしょ?なんで砂糖のひとさじも入れてくれないの」
「夏目への日頃の恨み辛みを込めてみました」
「またまたー」
とか言いつつ内心悲しい。
冗談であっても本気であっても、好きな人からの言葉一つはアメにもなるしムチにもなる。
とりわけ佐藤の台詞の99%は確実にムチが占めていて、残りの1%のアメな台詞は一年に一度聞ければ上出来だ。
恋は盲目。不満な訳ではないけれど、もう少しだけ優しさが欲しい。
「てゆーか俺甘いの嫌いなんだよ」
「じゃあなんでこの会に入ったの?」
二人きりの放課後。
元々佐藤に気があった俺は願ったり叶ったりだけど、学校なので逆に下手な事が出来なくて悔しい。
それでもひたむきにチャンスを待って居るんだけれど。
佐藤の気持ち。
零れる溜め息。
それがわかったら苦労はしない。次の台詞に期待しなくて済むからだ。
佐藤は相変わらず苦い顔。
「…わかんねぇの?」
「わからないなぁ」
苦いショコラ・ラテを啜り、佐藤は言った。
「夏目と一緒に居たいから」
突然のアメ。
不意打ちの罠。
砂糖の様に甘い日々。
期待しても、いいのかな。
end.
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