甘い期待

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 恋はお菓子によく似てる。 【放課後のショコラ・ラテ】 「…おかしい」 「何が?」 「夏目のチョコレートマフィン」 「何処がさ」 「なんでこんなに甘いんだよ」 「それは佐藤のショコラ・ラテが苦いから」  放課後の調理室。  俺と佐藤の二人で作った『洋菓子レシピ研究会』は今日も元気に活動中。 「いや、それにしてもおかしいだろ絶対。確実に砂糖の分量間違ってるよ。倍以上使ってるよ」 「佐藤への甘い甘い俺の思いを込めてみました」 「いらねぇ」 「そんなー」  マフィンのカップを片手に持って、今にも吐き出したいと言わんばかりに眉間に皺を寄せる佐藤。そんな表情すら可愛いと思えてしまうのだから恋は偉大だ。  この限定二名の珍奇な会は、少し前まで会でもなかった。  お菓子作りが好きなのに家にオーブンがない俺は、家庭科の先生に頼んで時々調理室を使わせてもらっていた。  一年の時から同じクラスの佐藤はそれを知ってから調理室に入浸るようになり、いつの間にか(恐らく軽いノリで)勝手に会昇格の申請までしてしまっていた。  ちなみに佐藤が作るのは、いつも決まってショコラ・ラテ。多分これしか作り方を知らない。
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