1:午睡

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  開け放たれた窓から、穏やかな風が流れ込んでくる。 陽光が優しく差し込む窓辺の机に突っ伏して、チャンミンは静かな寝息を立てていた。 長い睫毛が影を落とす目元には、うっすらと隈が出来ている。 枕代わりに頭の下に敷かれた本は辞書ほどもある分厚さで、側には数本のペンが転がったままだった。 「チャンミン」 不意に響く、声。 ギィ…と音を立てて開いたドアから、一人の青年が入ってきた。 すらりとした鍛えられた体躯に、よく焼けた肌が似つかわしい彼は、日に包まれて眠るチャンミンの元へ近づいてそっとその体を揺さぶる。 「起きろ、チャンミン」 「…ん…」 耳元で囁かれた声に、ふるりと細い肩が震えた。 何度か揺すられるうち、やがて頭を上げたその額に表紙の跡がついているのを見て、思わず頬を緩ませると、蕩けた視線が向けられる。 そっと目蓋を開きながら、チャンミンはぼんやりとした視界に声の主の姿を認めた。 「…ゆ、の…にぃ…?」 「ああ」 「…おはよう、ございます」 ユノ、と呼ばれた青年が笑んで、チャンミンもふにゃりと微睡みの名残のある微笑みを返した。  
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