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そう行って冗談混じりに笑うユンホに、チャンミンは不意に胸の奥を燻られるような気がした。
兄は未だに逃れられないでいるのだ。3年前の過ちから──決して彼自ら望んだわけではない、訣別から。
ユンホは、自分のせいで弟がこんな境遇に身を置くことになってしまったのだと思い込んでいる。チャンミンが選んだ道を、自分が狭めた選択肢の一つなのだと。
「兄さん」
両腕を伸ばす。
幼い頃、よくそうして温もりを求めたように。
どうしてか──兄の前でだけは、あの頃と何も変わらない、無垢なままの自分になれる気がして。
「…チャンミン」
力強く抱き締めてきた彼の感触が4年前とまったく変わっていなくて、それを確かめるようにチャンミンは目を閉じた。
この瞬間、己の世界のすべてをユンホで埋め尽くすために。
今でも鮮明に思い出す。
割れた食器、傾いたテーブル、散乱した本──血に染まる床、見開かれた四つの瞳。
そして、震える手。
4年前の冬。
二人は、両親を殺した。
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