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バタバタとけたたましく廊下を走る音がする。
その足音が徐々に自分のいる部屋に近づくにつれて音は大きくなって、何かもう大体予想できた僕は倦怠感に目眩がした。
紅茶くらいゆっくり飲ませてほしい。
バタンッ!
ほらきた、しまいには扉はノックも無しに勢い良く開く始末。
「龍ヶ崎先輩!!大変です!」
部屋に飛び込んできたのはもはや半泣きの少女が1人。
「何。バタバタ五月蝿い」
「えええぇぇえ!?何ですかその低いテンション!?というか大変なんですよ、先輩!」
「後にして」
「Σ後にしてたら死人がでます!」
「別にいいよ」
「良くないです!」
「……またなの」
そこで、ようやくウンザリしたように、彼―――龍ヶ崎潮(りゅうがさき うしお)は顔を上げた。
それ は彼女のせいでも何でもないが、しかしまるで彼女を敵と言わんばかりに憎々しい視線を送る。
冷ややかに瞼が細まるのを見て、少女はびくりと竦んだ。
「う、せ、先輩!そんな目で見ても私のせいじゃないです!!」
「はいはい分かった。行けばいいんでしょ」
「はう……。あ、じゃあ皆も呼」
「いらない」
「え?」
無機質な声色で切り捨てて、彼は白い手袋を緩慢な動作で外し、その辺にぽいと放り捨てた。
「――今僕は機嫌悪い」
一人で十分、と吐き捨てて、彼の姿は見えなくなった。
彼の手の甲に映った文字を眺め、少女は大人しく口をつぐんだ。
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