旅の始まりはワガママから

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闇の館を見習い達の講義のために訪れていたラシルは、いきなり王宮に呼び出された。 待っていたのは、王の従妹にあたる姫だった。部屋に通され、姫の姿を確認した途端、ラシルはクルッと向きを変えて部屋を出ていこうとした。 「こらっ、人の顔を見るなり帰るなんて、無礼でしょ」 ため息をついて、振り返る 実は、この姫、かなりのワガママで周囲を振り回すのが得意なのだが、ラシルが王宮に出入りするようになってから、散々、無理難題を要求して困らせてくれていた。 はっきり言って、関わりたくない。 「……失礼致しました」 「もうっ、話があるから呼んだのよ」 ろくな話ではないと、予想がつく。 だが、ここで話を聞かなかった場合、後々、大変なことになる。ひとまず話を聞いて、早々に退室しようと思った。 「何のお話でしょうか?」 「手伝って貰いたいことがあるの」 「お手伝いですか?」 「そう。龍探しに行きたいの。だから旅に同行してちょうだい」 「は?龍探しっ?」 「そうよ。かなり確実な情報を入手したの」 「…………」 ラシルは頭を抱えたくなった。 龍の逸話はたくさんあるが、存在は確認されてない。子供でも架空の存在という認識を持っているくらいなのだ。
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