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─────────
ヒュン───
「ひぎっ…………」
ヒュン───
「かっ……………」
─────────
「おい、そろそろだ。準備しろ」
髭面の男が、後ろを振り返らずに指示をする。だが、返事をするものは誰もいない。
「おい、聞いてんの…………」
それに苛立った男が振り返ると、後ろには、仲間が誰一人としていなくなっていた。
「お、おい!おめぇら!どこ行った!」
慌てて周囲を見回す。
すると、一人が木にもたれるように立っているのを見つけ、急いでそこまで走っていった。
「おい!ふざけるなよ!いい加減にしねぇと、ころ…………」
駆け寄りながら文句を言う男の言葉が、途中から消えていった。
それに比例するように次第に速度も落ち、最後には立ち止まってしまう。その表情は、何があるのか理解していない顔だった。
「…………な………………何が………」
やっとの事でそれだけを発し、口をぽかんと開けっ放しにして惚けてしまう。
木にもたれた男の頭には
鈍く光沢を放つ
刀が刺さっていた。
「………どう……なって」
その死体から目を逸らすと、周りの木から、何かぶら下がっているのに気付いた。
それは風に合わせて、ゆらゆらと不気味に揺れている。
「………あ……あぁ……」
よく目を凝らして見ると、それは人の形をしていた。
そう、白目を剥いて、木に首を吊った、人間のように。
不意に風が吹き、木々が騒めいてそれに木漏れ日が当たった。
それは
首を吊られた
男の仲間だった。
「う、うぅ、うわぁぁぁああああああ!!!!!!!!」
叫びながら、その場にへたれこむ男。その表情は恐怖に歪み、身体中が痙攣でも起こしたようにガタガタと派手に震える。
「な、何がどうなってやがる!何でこんな………!!」
「狩り」
いきなりの声に驚き、びくっと体が跳ねる。しかし見回しても誰も生きている人間は見えない。
それどころか先程は聞こえていた虫の鳴き声も、今は聞こえない。
ガチャ──
「ひっ!」
男の後頭部に何かが押し当てられた。
大口径の銃。
「狩る者、狩られる者」
いつの間にか男の背後には、ロウガが立っていた。
その目は鋭く、まるで獲物を前にした獣のような眼光が男に突き刺さる。
「死ね」
「そんな、待っ────!」
ガウン
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