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ここは大手のレコードショップTATSUYA。 ゲームコーナーを何往復もしながら、気になるジャケットを手にしては裏面を確認して、棚に戻す。 この作業を何度となく繰り返している彼の名は 篠原 京(28) 大手ゲームメーカーに勤める彼が、何故ゲームコーナーで悩んでいるのか。 話は、1週間前に遡る。 その日、仕事を終えた篠原が帰宅すると自宅のポストには1枚の不在票。 雑誌の懸賞で、体感ゲーム機Weeが当選したという。 「残念賞の音楽ギフト券を狙っていたのに」 等と思いながらも、篠原はWeeを受け取った。 ライバル社の株価を一気に上昇させた人気商品だ。 経理部にいて、商品とは全く関わらない篠原にも“凄い”との噂は届いている。 せっかくなので、一度は遊んでみるかと思ったもののソフトが無い。 せっかくなので、Weeのウリである“体感”を存分に楽しめるソフトをと思い、探しているのだが。 どれを見ても、篠原の心はときめかない。 「CDなら一瞬でジャケ買いできるのにな~。」 篠原はポツリと呟いた。 「きょーさん。」 突然、名前を呼ばれて篠原は慌てて振り返る。 「ウノ…?」
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