第1章 ツいてるっつーか、憑いてるよね確実に

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 俺が予想するに、この水晶の中にある鱗は、幸せ“そのもの”でもあるとされる伝説上の生物・白龍のものであり、この水晶を持っているだけで運勢がぐんぐんと上昇する――みたいなキャッチフレーズを持った御守り的なものなのだろう。  白龍なんて見たこともないし、世界的にも存在が確認されてないわけだから、まあその予想は所詮、想像の域は過ぎない。実際、白龍については世界七不思議にも数えられている。  ま、どうでもいいけどな。 「……ん」  見つけた。  黒い財布だ。俺の財布に間違いはなさそうだ。誰にも拾われてなくてよかった。ネコババされたら最悪だからな。  俺は財布を拾わんとして身を屈める。同時にポケットからするりと水晶玉が零れ落ちる。 「おっと……」  財布を拾ってから水晶玉にも手を伸ばしかける――が。  突如、水晶玉が発光する。  目のくらむような眩い白光が広がる。水晶玉を見つめていた俺の眼には、当然、光が突き刺さる。 「うおっ……! 何だ……?」  瞬間、俺は視力を失う。それも数秒後には回復したが、なおも水晶玉は光り輝くままである。  何だろう。  御守りの効力的な何かが働いたのか? 「んあ?」  しかしそれにも関わらず、どことなく辺りが暗く感じた。  強い光に当てられたからだろうか。  そんなことを思いつつ、空を見上げる。 「……は」  そこで俺はあり得ないものを見た。  それは伝説上の存在であるはずだった。  それは誰にも確認されたことがないはずだった。  そこにいたのは――白龍だった。  遠目で少しわかりづらいが、純白の鱗に、長い胴体、そしてその迫力。伝承通りであれば間違いなくあれは白龍だ。  雲間を優雅に泳いでいた。物理的概念も人間的常識も、関係ない。重力などまるで感じさせない、あたかも海中を遊泳しているかのごとき動き。その影が地上に落とされていたのだ。  え、何あれ。  開いた口が塞がらない。絶賛混乱中の俺。  そんな俺のちょうど真上あたりで、白龍は何かを落とす。白い光に包まれた“何か”は、ゆっくりと降下して――って、こっちに来てる!? 「ヤな予感……ッ!」  しかし逃げ出す暇はなかった。  気付けば目の前に、神々しいまでの白い光は着地していた。――ちょうど水晶玉のすぐそばに。  溢れ出す光が再び俺の視界を奪う。  次に目を開けたとき、そこには、  ――全裸の美少女がいた。
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