82人が本棚に入れています
本棚に追加
/69ページ
俺が予想するに、この水晶の中にある鱗は、幸せ“そのもの”でもあるとされる伝説上の生物・白龍のものであり、この水晶を持っているだけで運勢がぐんぐんと上昇する――みたいなキャッチフレーズを持った御守り的なものなのだろう。
白龍なんて見たこともないし、世界的にも存在が確認されてないわけだから、まあその予想は所詮、想像の域は過ぎない。実際、白龍については世界七不思議にも数えられている。
ま、どうでもいいけどな。
「……ん」
見つけた。
黒い財布だ。俺の財布に間違いはなさそうだ。誰にも拾われてなくてよかった。ネコババされたら最悪だからな。
俺は財布を拾わんとして身を屈める。同時にポケットからするりと水晶玉が零れ落ちる。
「おっと……」
財布を拾ってから水晶玉にも手を伸ばしかける――が。
突如、水晶玉が発光する。
目のくらむような眩い白光が広がる。水晶玉を見つめていた俺の眼には、当然、光が突き刺さる。
「うおっ……! 何だ……?」
瞬間、俺は視力を失う。それも数秒後には回復したが、なおも水晶玉は光り輝くままである。
何だろう。
御守りの効力的な何かが働いたのか?
「んあ?」
しかしそれにも関わらず、どことなく辺りが暗く感じた。
強い光に当てられたからだろうか。
そんなことを思いつつ、空を見上げる。
「……は」
そこで俺はあり得ないものを見た。
それは伝説上の存在であるはずだった。
それは誰にも確認されたことがないはずだった。
そこにいたのは――白龍だった。
遠目で少しわかりづらいが、純白の鱗に、長い胴体、そしてその迫力。伝承通りであれば間違いなくあれは白龍だ。
雲間を優雅に泳いでいた。物理的概念も人間的常識も、関係ない。重力などまるで感じさせない、あたかも海中を遊泳しているかのごとき動き。その影が地上に落とされていたのだ。
え、何あれ。
開いた口が塞がらない。絶賛混乱中の俺。
そんな俺のちょうど真上あたりで、白龍は何かを落とす。白い光に包まれた“何か”は、ゆっくりと降下して――って、こっちに来てる!?
「ヤな予感……ッ!」
しかし逃げ出す暇はなかった。
気付けば目の前に、神々しいまでの白い光は着地していた。――ちょうど水晶玉のすぐそばに。
溢れ出す光が再び俺の視界を奪う。
次に目を開けたとき、そこには、
――全裸の美少女がいた。
最初のコメントを投稿しよう!