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神々しい光の中から現れたのは、一糸纏わぬ美少女だった。
銀色――いや純白の髪の毛を肩甲骨のあたりまで垂らす。白髪、という感じはなく、雪のように綺麗な純白だ。
目鼻立ちの整ったどえらい美人。そんな少女が今、俺の目の前に立っている。
「……は」
咄嗟にはまともな言葉は出てこなかった。
なんだ、これは。夢か、夢でも見ているのか?
俺は自分の右頬をぶん殴る。痛い。もう一度殴る。かなり痛い。夢じゃない。
「……」
端から見れば奇行にしか見えない俺の行動を、少女はじっと見つめている。裸を見られたことによって悲鳴を上げるでも、逃げ出すでもなく、ただじっと、無表情で俺を見据えている。逆に怖え。何を考えているかはさっぱりわからない。もしかしたら何も考えていないのかもしれない。
「……えっと」
俺は殴るのをやめ、少女を注視する。無理だった。
裸だもの。童貞だもの。刺激が強すぎるんだもの!
「なんだなんだ?」
「おい、今のって……!」
「あぁ、龍……だったよな。それも白龍」
「さっき学校の裏に何かが落ちていかなかったか?」
そんな声が聞こえたような聞こえないような。しかしともかく今の“アレ”を見て騒ぎになっているのは確かなようだった。
……落ち着け。
少し考えてみよう。
たとえば、ここに誰かが来たとする。その人物が最初に見るのは、裸の美少女とそれを凝視する変態男。どう考えても退学フラグですありがとうございました。
「くそっ……!」
やばいやばいやばい!
ここは校舎裏、校舎と敷地を囲う壁に挟まれた場所。隠れる所なんてどこにもない。前か後ろ、どちらに逃げようとも誰かに見つかる可能性はかなり高い。
少女が俺は何もしていない、と弁解してくれればよいのだが……俺の運からして駄目な気がする。
どうする……! 俺の人生最大のピンチだぞ……!
滝のように流れ出る冷や汗を拭う。少女は相変わらず何を考えているかよくわからない表情で立ち尽くすのみ。逃げる素振りは見せない。
その時、俺は閃く。
“アレ”があったじゃねえか!
俺は急ぎ、財布を開くと、紙幣ではない札――すなわち転移札を取り出す。
顔を上げると、少女と目が合う。無言で何かを訴えているような……そんな気がして。
「あぁ、もう!」
俺は少女の腕、そして地面の水晶玉をひっつかむと、少女を掴んだ手に握った札に力を込めた――。
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