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まだまだ挙げていけばキリがないのだが、俺自身ものすごくブルーな気持ちになったためにここらへんにしておこう。
だが、これだけでも俺がいかに不運かわかってもらえたはずだ。確かに中には俺が原因のものもあるかもしれないが、それにしたってこれは“運が悪い”だとか“ツイてない”だなんて言葉では済まされないレベルであることはわかるだろう。
運が悪いんじゃなく、不運が良い。
ツイてないのではなく、憑かれている。
神からとことん見放された俺にはこんな言葉遊びのようなことも出来てしまう。
それらを総じて俺は――不運なのだ。
――っと、自己紹介がまだだったな。
俺の名前は天宮結弦(あまみや ゆづる)。魔法使いや魔術師、錬金術師などの養成学校である“国立光翼学園”に通う高校三年生。身長体重は平均より少し上。顔は普通。勉強も普通。運動は得意だが魔法魔術はイマイチ――そんなところか。
学校でも成績やら性格やらで目立っているということはない。かと言って空気扱いされてるわけでもない。本当に普通の学生なのである。
不運体質を除けばの話だけど。
そもそも、ウチの学校は国内ではかなりのレベルを誇る名門校だから、そこで優秀なヤツなんてのは全国単位で優秀なヤツってことになるし、相対的に見れば俺だってそこそこのレベルには達しているのだろう。特に劣等感なんかを持っているわけでもない。
もっとも、全国単位で優秀な魔法使い、魔術師であっても、経験と知識を積んだ大人の魔法使いには到底かなわない。たまに魔法使いの大会を観に行ったりするのだけれど、なんというかもう迫力が違う。あれを観たあとじゃ俺たちのやってることなんてお遊戯にすら見えてくる。
まぁまだ本格的な戦闘訓練はほとんどやってないし(やるのは三年生から、つまり今年からだ)、仕方ないっちゃ仕方ないのだけれど。
「ま、どうでもいいけどな……」
俺は独り呟き、歩みを進める。考えている間にも段差に躓いて転びかけたが、なんとか持ち直す。
今、俺は学校へ向けて歩いている途中なのだが、着くまでにまだ時間がありそうなので、もう少し補足説明をしておこう。
俺たちの住んでいるのは日本。極東の小さな島国だ。しかしこと魔法魔術に関しては、アメリカ、イギリスに次いで世界第三位の実績を誇る(魔法世界大会の成績や学生の魔力調査などによる)魔法大国と言ってもいいだろう。
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