82人が本棚に入れています
本棚に追加
と、まぁ、わははー日本すごいんだぞー的な発言をしてきたわけだが、残念ながら全国民が魔法を扱えるというわけではない。
あらかじめメタ発言が続いてしまうであろうことを謝っておこう。
魔法、魔術――そう聞いて普通の人が想像するのは、科学が衰退して、王国や帝国が復活して、魔物がいて、闇の組織が国家転覆を狙って、それを七人の賢者が防ぐ――みたいなそんな感じかもしれないが、ぶっちゃけた話、正反対だ。
科学は進化を続けていて、利便性で言えば魔法とあまり変わらない。次に王国も帝国も存在しない。そして魔物はいな――くはないけど、普通の動物と同じような扱いを受けている。非合法組織はあるかもしれないが、開けっぴろげに犯罪予告する世界規模の集団は確認されていない。七人の賢者も存在しない。ああ、いや、そう言えば国連の理事が十二人会とか言われてたな……。まぁでも、そんなテンプレートな人たちじゃないと思う。
魔法やら魔術ってのは人間の精神力と体力を犠牲にして発動する。魔力ってのは要するにその二つを統合した数値だな。もっとも、魔力って言葉自体は、今じゃほとんど使われない死語になってるけど。
つまりは体力だけでなくメンタル的な部分も大切になってくるわけだ。魔法を使いすぎると“虚脱状態”に陥り、何もする気がなくなる。
もちろん“魔”を扱うセンスも重要だ。というか体力、精神力以前の話としてセンスがなければ魔法は使えない。だから、いくらランニングしまくろうとも、滝に打たれて勤行をしようとも、使えない人間には一切使えないのだ。
とは言っても、それこそ漫画や小説みたいに世界を巻き込んだ魔法戦争が起こったりすることもないからして自衛も最低限で済むし、科学の力があれば生活に困ることは一切ないので、魔法を使えない人は使えない人である程度割り切ってるみたいだけど。
そんな感じで、誰に向かって説明してんだよ的なモノローグを続けていると、ようやく我が“光翼学園”に到着した。
外観は普通の学校より立派だ。とは言っても某魔法小説のように校舎が城――というわけではない。
七階建ての白塗りの校舎は三つの棟に分かれていて、その中心には芝生の敷き詰められた中庭。敷地の奥にはグラウンドやら演習場やら体育館やらプールやら――と施設はかなり充実していて、過ごしやすい。だてに高い入学金はとってない、というわけだ。
最初のコメントを投稿しよう!