第1章 ツいてるっつーか、憑いてるよね確実に

6/27
前へ
/69ページ
次へ
 さて、ここで一つ問題がある。  金に糸目をつけない我が学校のセキュリティーは当然ながら最高レベルである。見るからに重たそうな門。監視カメラ(目で見えるのは五台くらい)。警備員(魔法も使えるプロフェッショナル)。それに加えて、俺は詳しいことは知らない――人から聞いた程度なのだが、なにやら魔術が施されているらしい(侵入者撃退用のオートマチックなもの)。以前、強行突破を図った生徒がその魔術に引っかかって全治数週間の大怪我を負ったらしい――いやいや、流石にこれは嘘だろうが、なんにせよ魔術が仕掛けられているのは間違いないと言っていいだろう。  そして極めつけは―― 「筋肉ダルマめ……」  校門の前で立ちはだかる、スポーツ刈りで筋骨隆々、春でも冬でも嵐でも、いついかなる時であってもタンクトップに運動用の短パンを着用している体育教師だ。  プロのアスリート並みに筋肉がついており、そのキリリと引き締まった顔立ち(決して端正な顔立ちというわけではない。断じて違う)も相まって、一見すれば格闘家にも見える相貌。というか事実、空手やらプロレスやらをやっているから、見た目に即していると言っていいのだろう。  性格は、一言で言えばウザい。  熱血教師――なんてものは、確かに聞こえはいいが、度が過ぎると暑苦しいし、うざったく感じるものだ。  こうして毎朝の見張り役を買って出たり、不祥事を起こした生徒を生徒指導室へ連行して説教したり――と、熱血教師の鑑のような人なのだが、その努力と熱意が完全に裏目に出て、最近ではガチホモ疑惑まで浮上している。なんでも聞いたところによると、以前、ここを強行突破しようとした生徒(さっきのと同じ生徒らしい)が、うまく警備員を騙して敷地内に入ったところでヤツに捕まり、……その、単一電池を……入れられたらしい。  いやいや、いやいや! 流石にこれも嘘だろう……と言いたいところだが、否定できる証拠もないのだ。  一応、彼の名誉のために言っておくが、生徒思いの本当にいい先生だ。生徒目線で会話してくれるし、平等の精神を持ってみんなに接している。  ただ……うん、相手が腐女子の妄想力じゃあ……ね。熱じゃあ腐ったものはどうしようもないのよな。  まぁ、本人はその噂を知らないらしいから、それはそれでいいのかもしれないけれど。
/69ページ

最初のコメントを投稿しよう!

82人が本棚に入れています
本棚に追加