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「そんな…そんなこと、村長は本当に信じてるんですか?」
「わしも、村長になって聞いた話じゃ。代々村長に伝えられておる話じゃ。信じてはおらんかったが、先の鬼が現れたとき、この予言が現実になったと悟ったよ。」
「…だから村長はあのとき冷静でいられたんですね。」
「わしも冷静ではなかったよ。」
村長も疲れた様子だった。
「しかし、村長が、冷静でいなければ、みなの命を守れないと思ってな。」
「村長…」
「…わしは予言を信じる。お主達に子が産まれなかったのは運命だったのかもしれない。わしは…お主らに賭けようと思う。」
「でもどうすれば?村を出ようにも、鬼が外から見張っていると…」
「鬼は今日と同じ場所に現れるじゃろう。幸い地図の指し示す方向はそこから反対側で、そこは沖じゃ。鬼が姿を現しているとき、つまり日の出と共に行動開始じゃ。民家に隠れておいて、鬼が現れたら、出来るだけ隠れながら島から出るのじゃ。地図の場所に行くのにもそこから大陸にあがるのが一番早いじゃろうし。」
「でもバレてしまったら…」
「わかっておる。そこで、見つかってしまったら村の役員と出来るだけ若い衆でお主達が村の外に出られるだけの時間を稼ごうと思うておる。」
「!?」
「なあに、見つからなければいいことじゃよ」
「今から会合の前に、役員とめぼしい者を集めて話すつもりじゃ。そして会合で皆に話す。
それまで必要最低限の荷造りをしておきなさい。」
そういって村長は予言者が残していったと言う地図を夫婦に渡し、部屋を出ていった。地図をよくみると、ここに住め、といわれた印の他に、別の印があることに2人は気づいた。
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