序章 ~旅立ちの夫婦~

8/16
前へ
/18ページ
次へ
村人の動きが止まった。 声の主は村長だった。 「…鬼とやら、わしはこの村の長を務めてしておる者じゃ。」 「うむ。」 「わしたちは、お主の命令に従い、この地に城を築けばいい。そうじゃな?」 「そうだ。」 「村の衆はみな、先の同胞の死に混乱しておる。これではまともな仕事もままならんじゃろ。…一日だけ時間をくれないじゃろうか。」 「私から逃げる計画を立てても無駄だぞ。逃げる素振りを見せれば貴様らを殺し、別の村に変えるだけだ。」 村人は絶望していた。 「わかった。逃げたりはせん。ただわしは村の衆を落ち着かせたいだけじゃ。」 鬼は村長を睨み付けていた。村長は落ち着いた目で鬼の眼光を受け止めていた。 二人の沈黙は村人たちには永遠とも思える時間だった。 「ふん、肝の座ったじいさんだ。ぎゃーびー騒がれてもうっとおしいからな。明日日の出にまたくる。その間、ずっと監視しているからな。変な気は起こすなよ。」 そういうと鬼は村の外の山の中に入っていった。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加