prologue

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「……なあ、あんた。ドアの後ろに鍵がある。……そいつでこの手錠を取ってくれないか?」 殺気はなかった。それは本気で助けを求めている眼だ。 こんな世界で人を助けるのにメリットはほとんどない。 恩を仇で返されるのがオチだ。 だが、助けを求める相手、それも女性を見捨てるのは気分が悪い。 ドアの裏を見れば、鍵か掛かっていた。 それを取って女性の手錠を取ってやる。 崩れるようにして倒れたのを肩を貸して助け起こす。 「ありがと。素直に礼を言うよ」 初めて女性の顔を見ることができた。 端正な顔つきで彫りが深い。 その顔が安心したような笑みを浮かべていた。 「自己紹介が遅れたね。あたしはレイラ・マスタング。レイって呼んで」 「秋山和輝だ」 「和輝ね。OK、覚えた。大丈夫、立てるよ」 レイは和樹から腕を放し、自らの脚で立った。 そしてさっき和樹が入ってきたドアに眼を向けた。 「なあ、そこ以外に出口ってないか? 追われてるから来た道は戻りたくないんだ」 「残念ながら、無いんだ。それに、お客さんが来てる」 「えっ!?」 ドアが乱暴に開いた。 「ようやく見つけたぜぇ。おとなしく殺されな」 奴らだ。姿が消えたあたりを虱潰しにでも探したのだろう。 鍵はさっき和樹がしたように鍵を壊せば入ることも可能だ。 見た目に反して意外にも頭がいいようだ。 後から残りの三、四人も現れる。 「その銃の残弾は?」 「三、四発くらい。予備のマガジンも空」 「OK」 なぜ訊いたのかと思った次の瞬間、奴らの一人の男の顔面にレイの肘鉄が入っていた。 男は仰け反って倒れ込んだ。 「一人」 「誰だてめ……っ!?」 すべてもう一人が言い終わる前に、腹に蹴りを入れていた。 さらにその脚を軸に顔面も蹴り飛ばす。 「二人」 残るは二人。 着地すると同時に後ろにいた男の鳩尾に拳をたたき込んだ。 屈み込んだところを肘鉄で後頭部を打って追い打ちをかけた。 「三人目」 最後の男は最も体格が良い。 全身が筋肉に包まれ、身長も無駄に高い。 レイがとても華奢に見えてしまうくらいだ。 大男が6インチと銃身が長いM29の銃口を向ける。 だが、レイは臆することなく男の鳩尾に拳を叩き込んだ。 さらにバックステップで一歩下がると、素早い身体の回転で回し蹴りを男の首に打ち込んだ。
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