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白いTシャツの上からショートベスト。
傷だらけだった腕には包帯が巻かれている。
デニムのショートパンツから伸びる脚はスラリとしていながらも筋肉質でミリタリーブーツが良く似合う。
両脚にレッグホルスターが取り付けられていた。
前髪を残して髪を後ろで束ねたレイは、やはり美人だった。
スレンダーながらも身体の凹凸がハッキリとしていて、それに合わせて作ったかのような頭が乗っている。
頼りがいのある姐さん、そんな印象を受けた。
「い、いや別に待ってはいないさ。オッサンと話しててね」
和輝は心臓が高なるのを覚え、誤魔化すために背を向けてグラスのウィスキーを胃に流し込む。
すると、急に背中に柔らかいものが二つ、押しつけられた。
気づけばレイに腕を回され、後ろから抱きつかれていたのだ。
そうと分かると背中に押しつけられているものがはっきりと分かり、心臓の回転数が上昇する。
もうレッドゾーンまで入ってしまいそうだ。
「こういう時は嘘でも待っていたって言うものだぞ? あたしの王子様」
耳元で囁かれるが、やはり背中のものが気になってしまうわけで、手の中のグラスのウィスキーまで沸騰しそうだ。
「そろそろ解放してやったらどうだ? 姐さん。こいつ空冷だからすぐオーバーヒートするんだ」
トニーの言葉でレイがようやく離れた。
ホッと息をつくと、渡された水を一気に飲んだ。
そして咽せる。
「からかいがいがある奴だな。ところで」
レイは和輝の横に座ると、レッグホルスターから二挺の銃を取り出してカウンターに置いた。
鈍い金属光沢を放つフレームに艶消しの黒のスライド、グリップも黒い銃だ。
スライドに刻まれたシルバーの刻印は「DARK TROOPER」と刻まれていた。
「こんな上等な銃、貰って良いのか?」
これはコルトM1911A1ガバメントモデル。
通称コルトガバメントと呼ばれる銃だ。
これはトニーの愛銃であり、件の伝説もこのガバメントで作られたのだ。
マガジンはシングルカラム(単列弾倉)からダブルカラム(復列弾倉)に変更されて多弾数化されている。
それに伴ってグリップも太くなっているのだが、オリジナルのデザインが崩れていないのは見事だ。
レイの言うとおり、かなり上等な銃だ。
「ああ。強盗を追い返していたら、いつの間にか使う機会なんて無くなっちまった。棚の中で錆びらせるのも勿体ないしな。だからやるよ」
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