飛躍

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トニーはおもむろにカウンターの裏からウージーサブマシンガンを取り出した。 「それに、今はコイツもあるからな」 そして冗談めいた笑みを浮かべた。 そんなもんいつ手に入れたんだ、と和輝は思う。 「なら、ありがたく貰っておくよ。丸腰は落ち着かなくてね」 だからここに来るまでほとんど無口だったのか、とも思った。 レイはガバメントをレッグホルスターに納めた。 「カズ、時間じゃないか?」 和輝はトニーに言われて時計を見ると、午後六時を指している。 そう言えば、と目を向けると窓から差し込む光はオレンジ色に変わっていた。 「本当だ。行かなくちゃ」 席を立って手元のP226を、肩から下げたホルスターに差し込む。 「おい、どこに行くんだ?」 「俺のクライアントだよ。一応、仕事は完了したから、報酬を貰いにね」 「んじゃあたしもついていって良いかい?」 「あ、ああ。構わないよ」 日が傾いてくるに比例して人が増えてくる。 その中には普通の人などいない。 アル中に始まり、ヤク中、殺し屋、女衒(ぜげん)、売人、娼婦などマトモな人間が居ない。 敢えてマトモな人間を上げるならば、マフィア連中を除いて情報屋と傭兵、一部の殺し屋くらいだ。 人が少ない五番街を和輝とレイは歩いていた。 まだ日がでているため、人が出てくるにはまだ早い。 気づけば胸の高鳴りは収まっていた。 もう慣れたのかもしれないが、この街を歩くのは気を使う。 ボーッと歩いていれば、いつ襲われて命を落とすか分からないからだ。 「なぁ、いくつか質問OKか?」 おもむろにレイが口を開いた。 だが、すぐに和輝も口を開く。 「俺の質問に答えたらね」 いろいろ訊きたいたいことがあった。 バーの中で訊くことはできたが、人の目があった。 トニーは信頼できる人物だが、彼の前でも訊くのは流石にはばかれた。 「OK」 レイが頷く。 「まずはレイ、君の素性を教えて欲しい。君は何者で、なぜあそこにいた?」 出会ったときから気になっていた。 拷問自体は日常茶飯事だが、あんな地下でやることはほとんどない。 それに今時、鞭なんてほとんど使わない。 SMクラブならまだ現役だが、実際の拷問では訓練された者には効果が無い。 する側が妙な趣味があるなら話は別だが。
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