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拝啓、神サマ。
残夏の候、ますますご清栄のことお慶び申し上げます。
あぁ、あなたには暑さも関係ありませんでしたね。
ところでわたしは何のために創られたんでしょうか。
あなたは何か、おもしろい世界をこの場所に期待していたのですか。
ずっとわたしのことを見ていてくれたのですか。
わたしはあなたにお目にかかったことはないのですが、
さぞ、つまらない茶番でしたでしょう。
手をのばしても、届かないものとはあなたのことでした。
せめて神様なのだから、わたしの願いをひとつくらいかなえてほしいです。
わたしはここで終わりますが、
死んでもまだこの世界にとどまることがあるならば、
この世界の素晴らしさを消えるまで追い求めようと思います。
あなたがわたしを創られたこと、
感謝は致しません。
ご自愛のほど祈ります。
敬具
拝啓―――――神サマ……………カミサマ?
拝啓…………
いや、もういい。もういい。
彼女は紙をヒコーキに折った。
暮れかけた空を見上げて、それを構える。
誰も聞かない思い、
誰も知らない感情。
そのままでいい。
そのままなら、もう絶対に誰の目にも触れてほしくはない。
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