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サヨウナラ、あたしの、思い。
彼女はそう小さくつぶやいた。
逆光で彼女の表情はみることができないが、多分、微笑んでいるようだ。
そうして、彼女が紙ヒコーキから手をはなした瞬間、風が吹いた。
優しくも強い風はヒコーキをあおり、向こう側へ流していった。
「あ…」
風が止み、落ちかけたヒコーキをまた風が吹いて掬う。
そうやってどんどん遠くへ運ばれた。
とばした後に気付いた。
手紙に送り主の名を書いていない。
いいか、届かなくていい思いだから。
拝啓――――――――、
拝啓……
夕暮れが町を赤く染める。
夜に近づく温度が青春の汗を冷やしていく。
どうせなら、この目にうつるオレンジ色に溶け込みたい。
だれも自分など見てはいないのだ。
だから彼女も目を閉じる。
未だ響く校庭の声。
わずかに吹く風、耳許でまく。
17歳な自分。
興味ないふり。
17歳だった自分。
当たり前を嫌う。
平凡だった自分。
すべてを許すようなこの場所、
あぁなんてすばらしい。
愛する人、あたしの思いは……
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