その日俺は猫を助けた。

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先越市のいつも通りの穏やかな風を感じる今日この頃。 俺こと、公立先越高校2年B組 九条 暁彦は、只今とある女子に絶賛片思い中だ。 相手は同じクラスの小林 春恵という美少女だ。 容姿は大変可愛らしく、大きな瞳は常に光を宿し、笑顔が非常に眩しい。直視したら網膜が焼けるんじゃないかってくらいでまともに目を合わせることも出来ない。 少々天然な部分もあるが、とても優しく思いやりもある。 まさに名前通り春の恵みを体現したような女性だと俺は思う。 体格にしても非凡と言うほどではないけど、すらっと細い肢体に女性らしいボディーラインをしている。 間違いなく学年でも指折りの女子生徒だ。 男子生徒にも人気は高い。 ただ彼女は美少女ではあるけど、恋愛に興味がないのか現在彼氏はいないようだ。 俺としてはとても喜ばしい状況ではある。 恋人がいないのならこんな俺でもチャンスがあるのだ。 “こんな”と自称する俺といえば、身長は少し基準より高めで、顔立ちは鋭い。 ここまでならなんかイケメンと勘違いされそうだが、周りからは『なんかヤクザさんみたいだね』『若頭?』などと言われている。 ほっといてほしい。れっきとした堅気である。 ヤーサンと揶揄されるこの顔はキツネ顔の母の遺伝から生まれたものだ。 俺も姉も細い輪郭と釣り上がった目つきは見事母親譲り。 逆に我が父はタレ目で見るからに穏やかな顔立ちなのだが、俺たち子供に反映されることはなかった。母の遺伝子強し。 伊達に父を尻に敷いてない。 おかげで、顔に関しては恐がられるか馬鹿にされるかのケースで精神的ダメージを受ける。 中学の時なんか運悪く、柄の悪いグループに標的にされた時期もあった。 俺は見た目と裏腹に基本的に喧嘩は苦手だけど、鋭い顔のおかげで全く喧嘩をしなかったわけじゃない。
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