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小林と同じクラスになって早数週間、まともに会話したことなんて片手が全て折ることができるか不安なくらいだ。
そんなわけで、好意を持っているといっても彼女のことを何でも知っているわけじゃない。
趣味にしても動物好きと盗み聞きして知ったくらいだし。
部活は剣道部で、有段者という程度のことしかわからない。
俺は彼女のことをよく知らない。けど好きである事は間違えない。
何か彼女との距離を縮められる出来事があればとか常々思う。
…まぁ、ある訳ないよなぁ。
「はぁ…ネコ型ロボットがなんかいいものくれないかなぁ…」
放課後の河川敷を歩きながら、ため息混じりにかないもしない願望をごちた。
もうすぐ夕やけになりそうな太陽に照らされ、そよ風を受けつつ帰宅する帰宅部の俺。
思わず馬鹿野郎と言ってしまいたいほど美しい夕日だ。
…と黄昏たい気分だぜ。
現実逃避とかそんなつもりはないけど、特に大きな悩みもなく、そのため最近考えることは始終笑顔の可愛い小林の事だけだった。
最近は気づけば自然と彼女を目で追っていたりする。
目が合いそうになると咄嗟にそらしてしまうのは青春の至りだと思う。俺のヘタレ!
ついでに残念なことに席が離れているため些細な話題で会話することも無い。
たまたま、教室のドアで出くわして「おはよう」と挨拶できるだけでも幸せな1日になるわけだ。
2学年の生活はまだ始まったばかりではある。
しかし、余裕はない。
学園祭とか修学旅行ならもしかしたら彼女との距離を縮められたりできるかもと思うが、その前に小林に彼氏とかできたら目もあてられない。しつこいようだが彼女は美少女だ。
俺以外にも彼女と仲良くなりたい奴なんて数知れずといったところだろ。
おかしい話ではない。
学園祭や修学旅行中一緒に回りたいと思う俺みたいな奴は星の数だろう。
もし、小林と知らない誰かが、付き合って…き、キスなんてしてたら…
…あ、あああああああ~!!
…そんな思春期の想像が最近の俺を憂鬱にさせる。
「ハァ…あ~なんなんだろうなぁ~」
憂鬱な気分を誤魔化すために大声を出してみる。
「あ、いけね!?」
そんな自分の恥ずかしい行動が迂闊だったと今更思い、辺りを見回す。
ここは通学路。
他の生徒などから独り言をする変な人と周りに言われたくない。
幸い周りには誰もいなかった。
「ふぅ…」
俺は安堵のため息をつく。
自重しないとな、なんて心の中でごちる。
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