炎天下、西よりの来訪者

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 おや。珍しいことに、傲岸不遜な大天使様が非を認めている?  どういう風の吹き回しだろう。ゲームのし過ぎで頭のネジでも吹き飛んだのか。 『君に与えたのは嵐の権能。しかし、君は蛇殺しの剣を行使しただろう?』  言われて、川を分断するという非常識な被害をもたらした力が思い浮かぶ。  あれには酷い目に遭った。和臣の窮地に駆けつけた少女まで巻き込んでしまったのだ。  自己嫌悪に苛まれる和臣に、天使は超然として告げた。 『……あれは、こちらの手違いだ。何の因果か、君には与えられるはずのない神力までもが授けられていた』 「それはつまり、蛇を倒した力が俺にあったのは、天使のミスってことか?」  天使は神妙な面持ちで頷く。この天使にこんな表情があったとは驚きである。  だが、蛇殺しの権能が偶然の産物だったとは。  もしあれがなかったら、和臣はやられていたかもしれないというのに。  これも神の思し召し……というやつか?  天使には文句しか思いつかないが、神様には感謝しておきたくなった。 『そこで、だ』  やや語調を強めたミカエルの言葉で、和臣はハッと我に返った。  神への感謝を邪魔するとは、不届き者め。 『幸いにも、君は最近神を殺している。それも水を司る蛇の神だ。本来、あの程度の神を倒した程度では君に権能は与えられないのだが……』  スサノオ。彼は日本のみならず、世界にも知られるビッグネームな神様である。
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