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認識は信仰、信仰は神力に結びつく。広く知られる神は、それなりの力を備えている道理である。
ならばそれほどのラスボス級を殺めた者が、いまさら中ボス程度を倒してレベルアップできるものか。
これは、当然ミカエルの弁論である。和臣には到底理解したくない解釈だった。
『蛇神殺しに対する権能として、蛇殺しの剣を君に与えたことにしよう。そうすれば我らの過ちはなかったことになる』
「おい、それって隠蔽じゃないか! 天使がミスを隠して知らん顔かよ。見損なったぞ!」
『……認めたくないものだな。自分自身の若さゆえの過ちというものを』
「何百歳かも分からないような奴が何言ってんだ!」
和臣が上げた反意の声に、ミカエルは知らん顔で何処かを見つめている。
こいつを信仰するのは間違いだと確信できる。正義とはどこ吹く風だ。
……しかしながら、考えてみるとあの力が無ければ和臣は死んでいたかもしれないので、強くは言えないのだが。
『ええい、五月蝿いな。私が言いたいことはそれだけだ。もう君に用はない』
しかも批判されるとふてくされたかのように和臣を邪魔者扱いだ。
呆れて言葉も出ない。というか、そろそろこの天使との付き合い方を学んできた。
「――分かったよ。じゃあな」
別れを告げると、和臣の意識は暗転する。
無駄に発揮される順応性のせいですっかり慣れてきたその感覚に、和臣は身も心も委ねた。
唐突に世界は変わり、和臣は神様が暴れ回る危険な現実に戻っていった……。
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