炎天下、西よりの来訪者

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「と──」 「き、君は! つい先日一年二組に転入してきた謎だらけの美少女・桐峯十華ちゃん!」 「我らのアイドルである君が何故ここに!?」  声をかけようと和臣が口を開いた瞬間、それに被さるように中田川を始めとする居残っていた男子連中がざわめき立った。  今の中田川の説明通り、教室に現れた少女の名は桐峯十華。  とある事情から、和臣が少し前に知りあった女の子である。  それまで和臣と対峙して陣形を組んでいた輩は、怒濤の勢いで新たなる入室者に殺到した。  まるで芸能人を発見して集る野次馬だ。こういうミーハーな連中の行動原理がよく理解できない。 「なん、ですか……?」  一方の十華は、当惑した様子で群がる男どもと和臣を交互に見比べていた。  助けを求めるような視線を送られて、ようやく思考と行動が一致する。  並み居る奴らを押し退けて、囲まれる十華の前に躍り出た。人混みから出てきた和臣を見て、十華はハッと姿勢を改める。 「十華、なんで来たんだよ? 待ってろって言っただろ」 「すみません。遅いので、何かあったのかと」  この少女は、可能ならば四六時中どこであろうと和臣に付き従おうとついて回る。  だから学校でも、毎日のように登下校を共にする。どうやら彼女なりの使命感と言うか、そういうことが当たり前だと認識しているようだ。  それならいっそ待ち合わせにしようと申し出て、今日まではそのようにしてきたはずだ。  それが今日に限って──こうなることが分かっていたから、迎えに来ることだけは断固として拒否したのに。それもこれも中田川に捕まったせいだ。  あまり目立たない筈のクラスメイトと人気上昇中の後輩の会話にただならぬ気配を感じ取ったのか、中田川を始めとする面々が文句を言いだした。
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