炎天下、西よりの来訪者

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「和臣、てめー! 十華ちゃんになんて言い草だ!」 「そうだそうだ! ゆかりん先輩というお人がありながら、後輩にまで手を出したのか!」 「先輩に後輩に……お前はロリコンか!? 握手しよう同士よ!」 「というか十華ちゃんとどういう関係だ!? 知り合いだなんて聞いてないぞ!」  口々に叫ばれる疑問と恨み事。中には和臣に手を差し出してきた者も居たが、それよりも和臣は弁明を試みる。  しかしなんと説明すればいい? この少女に関しては、他言できない情報の方が圧倒的に多い。  何かを言おうとした十華を無言の内に制し、熱気を帯び始めた男子生徒たちに釈明を行う。 「……言い訳が見つからない。なんて説明すればいいんだ!?」 「その説明を俺達は聞きたいんだよ! すべてを実しやかに話せ!」 「それだと嘘っぽく聞こえないか? じゃなくて。まさか、人には言えないような関係なのか……!」  寸前になって頭を抱えた和臣を、野郎どもの怨嗟の声が襲った。  しかも中田川たちが無駄に騒ぐせいで、教室内の他の生徒もこちらを注目している。窓の外にも人が集まり始めているようだ。  これ以上囲まれては厄介だ。深く詮索されて、誤魔化しきる自信は無い。  決断は素早く。唯一の荷物である鞄はすでに肩から下がっている。  和臣は十華の手を掴むと、包囲網を破って教室を飛び出した。 「あ、待て!」 「逃げたぞー!」  後ろから声が追ってくるが、もちろん無視。放課後で人の数も減った廊下を一目散に抜け、階段を駆け下りて昇降口へ。 「十華。急いで靴を履き替えろ。逃げるぞ」 「どうして、逃げるのでしょうか?」
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