炎天下、西よりの来訪者

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 日本ではあまり見かけないワンピースタイプの服に茶色のブーツ。髪に合わせてなのか、全体的に色調は赤だ。  ちらりと見えた顔立ちも、およそ日本人にはあり得ない欧州系の幼い美貌。華奢な体つきと相まって妖精めいた可憐さを持つ。  近づくにつれて、赤い少女が喋る──というか捲し立てる言語が耳に入ってくる。学校で聞いた覚えのある響きだから、英語だろう。  鈴を鳴らしたような綺麗な声による流暢な英語。当然ながら、日本人には聞き取り辛い。 「……スサ?」  一歩踏み出した和臣に、同じように少女を見ていた十華が疑問の声を上げる。いかに外国人だろうと、相手は小さな女の子だ。困っているようだし、放っておくわけにもいくまい。  また一人地元住人を掴まえ損ねた少女に、和臣は思い切って声をかけてみた。 「えーと……メイアイヘルプユー?」 「?」  初めて相手方から声をかけられたのだろう。振り返った少女は純粋な疑問を表情に浮かべて、無垢な瞳が和臣を見上げてくる。  だが、英語で話しかけられたのだと理解すると、少女は怒濤の勢いで喋り出した。 「──! ……。……──…! ────!?」  まるで言葉の波だ。日本語に慣れ過ぎた和臣には聞き取ることもできずに慌てる。焦ってあたふたと日本語で返していた。 「ちょ、待った、ストップ! もう少しゆっくり……スロウ? で喋ってくれーっていうのは……トーク?」  身振りも交えて、捻り出してきた英単語を駆使してなんとか意図を伝えようとする。  英語の成績は悪くないつもりだが、やはり書くのと実際に話すのでは訳が違う。  和臣が言わんとしていることがなんとなく通じたのか、少女の勢いが落ちてきた。その隙に体勢を整えようと言葉を紡いだ。 「とりあえず落ち着いて話そう。日本語は解る? お嬢ちゃん」 「da……」
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