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童女と言っても差し支えない麗しい見目。やや気だるげに伏せ気味の目は、好奇心を刺激された時のみ猫のようにパッチリと開く。
表情はクールというか抑揚が少ない。作り物めいた顔立ちも合わせれば氷の花のような儚さがある。
通常の日本人よりも色素の薄い髪は長く、背丈の低さもあって身長にも勝ろうかというもの。前髪だけはきちんと切り揃えられていて、この女が持つアンバランスさの一端を垣間見せた。
背は低く、妙に妖艶な居住まいではあるが印象も幼い。しかしその名は“氷怜”よりも重く、呪術師としての力は【四皇家】の中でも次席につく。
女の名は、譽夕湖(ほまれゆうこ)。いにしえの太宰府を本拠として、九州一帯の呪術師を支配する譽家の現当主である。
高校生と言っても通用しそうな容貌をしているが、実際の年齢は青春時代を遥かに過ぎているはずだ。見た目に騙されれば、肉体的にも精神的にも痛い目に遭う。
有する呪力が至純の域に達した術師・魔女は、肉体の能力をある程度操ることが可能だ。
呪力を高めることで代謝を活性化し、傷の回復を速めることも。肉体年齢を一定で保ち、疑似的な不老を成し遂げることもできる。譽夕湖の外見は、その術によって若返ったものなのだ。
──ちなみに、神殺しの異常な生命力、回復力の源もこの原理によるものである。神殺しがその身に有し、行使を可能とする魔力は人間の数百倍に及ぶ。
「俺はあんたと無駄話をするために、わざわざ九州まで足を伸ばしたわけじゃない。さっさと話せ」
「ふむ……。“火”の四月朔日が生んだ異才、氷怜の名を持つ男がせっかちじゃな」
「あんたの頭が万年春なせいで氷は溶けつつあるんだ。“氷”の譽が。永久に冬眠していろ」
火と氷。その由来は五行にある。特に火は、神事などでも使われる要素だ。精霊と呪術を国の柱としていた背景を持つ日本にしては、これほど密接な関わりを持つものはない。
しかし氷は、木火土金水のいずれにも当てはまらない属性だ。それについては、譽家が有する複雑な性質に端を発する。
「せっかくの夏じゃぞ? 海水浴にスイカ割りにかき氷に流しそうめんと、楽しむべきことが山のようにあるというに、眠っているわけにもいくまい」
催促する氷怜の眉がピクリと動いたが、マイペースを崩すことなく夕湖は自らの思いを語り聞かせた。
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