炎天下、西よりの来訪者

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 だらだらと会話を続けていても実りはないので、和臣は本題に入ってもらうことにした。  この天使と世間話などしていたら、そろそろゲームの話に逸れてしまいそうなのである。  白い両翼で地面から浮かび上がる天使の足下には、家電用品店などでも目撃するゲームのパッケージが山積みになっていた。  ついにこの空間にまで持ち込んできたか。しかも全て日本語のパッケージだ。 『うむ。実は、君の権能に関する会議が終結した。よって、その結論を伝えにわざわざ降臨してやったというわけなのだ』 「あんまりありがたくない降臨だな。……うん? 俺の権能?」 『その通り。思い当たる節があるはずだな』  天使に示唆されて、和臣は自らの記憶の糸を手繰ってみた。  権能。それは神殺しへ与えられる、殺害した神の力の一部を切り取った代物である。  ミカエル曰く全てを与えては面白くないということだが、実際には人間という身に偉大なる神力全部は大き過ぎるのだ。  器の許容量を超えれば中身は零れ、あるいは器も壊れてしまう。  和臣がこれまでに戦い、勝利に至った神は二柱。  和臣が果たした最初の神殺し。暴風暴雨の神スサノオ。  そしてつい先日、四月朔日家との間で起こった一件で偶然……いや。  あれは、四月朔日氷怜がわざとあの場所で和臣とぶつかることで神を誘発したのだと後で知った。  ともかく、土地神である名もなき水の蛇神だ。  思い当たる節があるとすれば、後者。 「この前倒した、蛇の神様のことか?」
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