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久々の合宿所は誰も使わなくなり殺伐とした雰囲気だった
「俺らの時はもっと…」とメンバー全員が全員口を揃えた位だった
とりあえず一人一部屋を使えるので先にマネージャーに持って来てもらい適当に積まれていた荷物を各自部屋へ運んだ
誰も使って居ない部屋を一人一室使い懇談室も決めてあとは各自自由に過ごした
カミセンの三人は仲が良く一つの部屋に集まってはしゃいでいたし、井ノ原は昼寝の続きに入っていた
『はぁ…懐かしいなぁ…一人で居るとここはこんなに広いのか…』
坂本はどこまでも殺風景な部屋をベッドで寝そべりながら見つめ回していた
コンコンコン…
ふいに坂本の部屋のドアが鳴った
『はい…開いてる』
坂本が答えるとドアノブが回った
『入るよ~』
気の抜けたコーラみたいな声で入って来たのは長野だった
長野と坂本そしてもう一人井ノ原はここでの生活が言わば兄弟同然だった時の仲間だ
『そろそろ思い出に浸ってる頃じゃないかと思ってさぁ~』
どうしてだろうか長野は坂本の行動が手に取るように分かるらしい
長野曰く長年の勘なんだとか
『お前には恐れ参るよ…』
坂本は鼻でフッと笑うと長野を見つめる
『コーヒー入れてきたから飲みなよ??』
『甘くないだろうなぁ??』
長野が然り気無く置いたコップをジッと見つめ探るような言い方で問い掛ける坂本の顔はどこかガキッぽかった
『もちろん…坂本くんって必ず疑う癖直ってないよ??』
『だよな…俺、小心者だからよ』
鼻でフッと笑うと坂本はコーヒーを口内へ注いだ…その瞬間、クラッと目眩に似た振動が頭を揺らした
『危ない…コップ…置いた方がいいよ??』
その様子を見て咄嗟に手が出た長野に支えられるように坂本はコップを元の位置へ戻した
『悪いな…俺も…年かなぁ…』
意識が遠のく中でヘラヘラと笑う坂本とそれをニコニコと見守り抱き上げる長野…物凄く奇妙な展開だ
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