序章『いつも通りの喧騒』

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 青く、深い空だ。  視界は青で埋まり、時偶白が混ざる。  その青空に一つの大きな影がよぎった。それは風を割り、空を裂き進んでいく。  船だ。それもとても巨大な。  その船は船艦都市と呼ばれているもので、都市国家を持つ船艦だ。故に表層部には町や緑が存在し、人々が生活しているのが見受けられる。  “船艦都市_高天原”は鐘を鳴らし、その音を数度響かせた。その音に重なるように放送の声が流れる。 『皆様、艦長の雅です。あと数時間で今回の帰航地である、武蔵に入港致します。入港する際、武蔵の人達に迷惑をかけぬようお願い致します』  放送が聞こえなくなると同時に、鐘が数度鳴り、また艦全体に響いた。       ●○●  “高天原”は前後部三艦、中央部二艦の合計八艦で構成されている。その中央後艦の上。幾つかの人影があった。  黒を基調とする、装甲型の制服を着た若者達だ。人の姿をした者もいれば、人ではない者もいる。  若者達は皆、手に武器を持ち、一人の女性と向かいあっていた。        オートマトン  群青の髪の自動人形だ。彼女の両の手には対を為す双剣が握られており、声を発する。 「では皆様。これより午前の授業である、実戦訓練を始めます」
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