序章『いつも通りの喧騒』

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一人取り残された葵は、皆が飛んだ方向を見た。 ……速いな、皆  もう既に生徒達の姿は彼方だった。  目を凝らして見ると、早速数人がリタイアしている。  それを眺めながら、 「さて、私も追いかけようかな」      ●○● 「──っち」  舌打ちが聞こえた。  おそらく、今攻撃を仕掛けた生徒だろうと検討をつける。 ……たしかに、今のは惜しかったですね  しかし、まだ甘い。  自動人形のエヴァンジェリンはその生徒の二手目を軽くいなし、右手に握ってる片割れの剣の峰で首を殴りつけた。  頸動脈が圧迫され、倒れる。  倒れたのを確認し、加速しようと脚に力を込めようとするが、 「──っ!?」  エヴァンジェリンの斜め後ろ。そこから右側頭部目掛けて矢が飛んで来た。  エヴァンジェリンは一瞬で判断を下す。  体を捻り、矢を叩き切る為に右の剣をもう一度振るった。  破砕音と共に煙が舞い、視界が潰れる。 ……む、これは……?  先程の矢に、目眩ましの術式が込められていたのだろう。視界が白で染まった。  厄介だ、とエヴァンジェリンは判断を下す。しかし、 ……良い判断です  目眩ましは、乱戦なら有効な戦術だ。相手を撹乱でき、更には態勢をも立て直せる。 ……さて、どうするべきでしょうか……     ●○●  走りながら、弓を構える支倉・鈴は、汗を流す。 ……やっぱり強いですね、エヴァさんは  先程の矢。あれには視覚妨害と、迷彩の術式を付与していた。にも関わらず、彼女は反応し、撃墜した。
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