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暗闇の中、瓦礫の間を駆ける二つの影──。
先ず一つ、そこにあるのは明らかに人ではない異形の影。
こちらは駆けているというよりは飛んでいるという方が正確だが。
もう一つ、そこにあるのは一人の人間の影──闇に浮かび上がる形からして、おそらく女だろうか──後ろの異形の影から逃げる様に、長い髪を風になびかせながら瓦礫の間を駆け抜けている。
女は何度も追い付かれそうになっているが、そのたびに走るスピードを上げて距離を離していた。
痺れを切らしたのか、後ろの異形が何かを放つ為の溜めに入る。そして自身の口から巨大な火炎弾を放った。
「ッ!? もう……鬱陶しいわね……ッ」
女はそう小さく呟きながら立ち止まり、異形の影に手のひらを向ける。
放たれた火炎弾はすぐ後ろまで来ていた。
「いつまでも──」
突然、女の周りに水が現れ、そのまま球体を幾つか形作り浮遊した。
「──調子に乗ってんじゃないわよッ!!」
女は叫び、それと同時に浮遊していた水球が火炎弾に向かって行く。
炎と水はぶつかり合い、相殺され、水蒸気が立ち上った。
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